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「電影故事」などのカメラマンが見た、張國榮という人

一切盡在不言中
(もはや言葉は要らない)






 張国栄の投身自殺の事件を伝え聞いても、私は長いこと信じられなかった。彼の声が、彼の笑顔が、私の頭の中に浮かんでは消えた。「覇王別姫」の後、張国栄は上海と切っても切れない縁で結ばれたかのように、上海を舞台にしたよい芝居が続いた。「風月」(「花の影」)、「新上海灘」、「紅色恋人」(「追憶の上海」)といった張国栄の主演作品に附いて、私にも一度、また一度と彼を取材撮影する機会が与えられた。数年にわたる彼との頻繁な接触と付き合いの中、私にとって最も忘れ難く印象に深いのは「風月」での張国栄の最後の8シーンの撮影のあった日と、その夜、彼が全スタッフに対する謝礼のために開いたお別れパーティの時のことだ。
 
 「風月」という一つの作品を撮るためには、撮影から編集まで2年という月日が費やされた。上海から蘇州へ、車?から同里へと私は全てのロケ地を回った。ある日、私が再び車?の「風月」の撮影セットを訪ねると、制作主任の陳氏が私に言った。「今日来たのは正解だよ!今夜は張国栄がみんなにご馳走してくれるんだ。たった今決まったところだよ」張国栄は残る8シーンの撮影を今日中に終え、明日は香港に帰るのだった。

 それはあのアパートでの、彼と周潔のシーンだった。私は室内をぐるりと見回した。家具、小物、すべてが30年代の雰囲気でまとめられていた。張国栄はスーツを着て部屋の真ん中にあるテーブルの傍らに坐っている。チャイナドレスに身を包んだ周潔が、薔薇の花束を抱えてドアを細めに開けると、忠良の顔を一筋の光が射す。ドアに立った天香里の女がつぶやく。「毎日毎日会いたかったわ」と。そして、ゆっくりと忠良の方へ向かって歩みだす。

 張国栄は芸術に対して非常に真面目で厳しい人間であった。撮影中は絶対にインタビューを受けなかったし、写真撮影も許さなかった。だが、あの日は全てのシーンの撮影が終わったら、私に写真を撮らせてくれると承諾してくれていた。私は辛抱強く待った。待っている間に撮影する場所を決めた。映画の最後のワンシーンはカメラを高い位置から回し、張国栄と周潔のキスシーンを撮るというものだった。

 監督の「OK」の一声とともに、張国栄は「風月」での全てのシーンを撮り終えた。彼は歩いてくると、私を見ながら両手を広げて「あの日はごめんね!本当に仕方なかったんだよ」と言った。私は彼がおとといのことを言っているのだとすぐにわかった。その日は彼と周潔はベッドシーンを撮っていたので、写真撮影ができなかったのだ。こんなにも大物のスターが、こんなにも礼儀正しく誠実に接してくれることに、私は本当に感動した。
張国栄は自分の服装と身だしなみを注意深く整えると、私の方に振り返って言った。
「どこで撮る?」

ちょうど日が暮れかかった時刻で、ベランダからは一筋の夕日が小屋の中に射し込み、バックにはもう一軒別の30年代の家が遠くに見えていた。張国栄が門柱にもたれかかると、ちょうど逆光となって、それが非常に美しく効果的だった。私は更に効果を高めるために、照明係にライトを少し足すように頼んだ。本当はあの日の予定では張国栄一人を撮影する予定だったのだが、思いがけず舞踏家の周潔もその場に居合わせたので、私は即座に二人一緒の写真も撮ることに決めた。張国栄は私よりもっと早くにそのことを思いついていたようで、周潔を自分の前に引き寄せると、すぐに役の中に入っていった。見つめ合った二人の目は深い輝きをたたえ始め、二人はますます架空の世界に入っていった。私はフィルムを使い切るまで、絶え間なくシャッターを押し続けた。私が「もういいよ」と声をかけた時、張国栄はまだ深く役の中に沈んでおり、まだ覚めていなかった。私は自分が声をかけたことを心から悔やんだ。フィルムを替えて、もっともっと撮り続けるべきだったのだ・・・・

夜7時、松江紅楼賓館レストランには灯りが煌煌と灯り、建物の中は人の声で湧きかえっていた。「風月」の陳凱歌監督が前に出てステージに上がり、マイクを手にとって言った。「今朝、国栄が私のところに来て、今夜はスタッフ全員にご馳走すると言った。それを聞いて、私は国栄が帰るのだということを急に思い出した。国栄とは二度目の仕事だが、彼の素晴らしい人間性には本当に感心している。いつも他人の立場に立って物事を考える・・・」監督の言葉が終わらないうちに拍手が響き渡った。そして国栄と監督の二人はそれぞれにグラスを掲げ、10テーブル以上集まったスタッフに敬酒をした。

この時から私は最も忙しい人間になった。みんなが先を争って、張国栄と並んで写真を撮りたがったからだ。どのような素晴らしいご馳走がテーブルの上に並ぼうと、みんなの興味の対象は料理ではなかった。みんなの注意力は全て張国栄に集中していた。最初のうちはやや大胆な者だけが、張国栄がテーブルに敬酒に回って来た際に、タイミングよく一緒に写真に収まろうとしていたが、そのうちにみんな大胆になって直接張国栄を引っ張り始めた。メイク、小道具、大道具、照明に運転手、皆が皆揃ってこの貴重な機会を逃してなるものかとばかりに、先を争って張国栄と一緒にツーショットを撮ろうとしていた。これは単に張国栄が売れっ子の歌手であり俳優であるというだけでなく、いや、それよりもむしろ張国栄の人間性によるものだった。一年近くになった苦労多き撮影期間、張国栄は決して驕り高ぶることなく真面目で、スタッフそれぞれの苦労をよく理解し、誰にも親切に接していた。こういった毎日の積み重ねが、今日の皆の彼に対する好感を作っていったのだ。

 この時、前のスクリーンに突然「何日君再来」のMTVが流れ出し、「風月」の監制である孫彗専が皆の前で歌を披露した。孫女史はテレサ・テンのこの歌を高らかに歌い上げ、騒がしかった現場の雰囲気を別世界へと誘った。歌い終わった孫女史は「私は歌は得意じゃないんですが、今さっき張国栄さんに『僕のために何か一曲歌ってくれない?』と言われたので、この曲を選びました。さあ、今度は私が言う番ですね。張国栄さん、皆のために何か一曲歌ってくれませんか?」「イェ〜イ!」張国栄の気持ちなど全くお構いなしに、その場にいた皆が彼の代わりに答えていた。拍手の音と皆の歓声が怒涛のように巻き起こり、皆は声を揃え、節をつけながら「張国栄、歌え!」「張国栄、歌え!」と叫び出し、その歓声は屋根が抜け落ちてきそうなほどだった。先ほどの張国栄との写真撮影がパーティの一つのピークだったとすれば、このカラオケ大会は二つ目のピークだった。

 張国栄は困った様子で頭を振りながら「自分で蒔いた種だな」とため息混じりに言った。
もちろんだ。今ここで張国栄が断れば孫女史に借りをつくるだけではない。今日のホストとして、どうして皆の熱い申し出を却下することができるだろう? とうとう張国栄は、皆のために「祝福(Mediaプレーヤーファイル)」(* 張學友が94年にヒットさせた名曲)を歌うため、ステージに上がった。これは張国栄が歌謡界から引退して以来、公衆の前で歌う初めての歌だった。「風月」の撮影スタッフ全てが幸運な観衆となり、この特別な素晴らしいハプニングのため、会場は一瞬にして水を打ったような静けさに包まれた。張国栄はマイクを取ると歌い始めた。『朋友我永遠祝福イ尓---』『嘩---』拍手の音が歌声をかき消してしまいそうだった。

「不要問不要説 一切盡在不言中 這一刻イ畏著燭光譲我 静静地度過・・・・・」

 張国栄の思いを込めた歌声はホールに響き渡り、全ての聴衆を釘付けにした。人々は呼吸をひそめ、この貴重な数分間を心ゆくまで楽しみ、味わおうとしているように見えた。
「説再見 再見不会太遥遠・・・・・」張国栄の歌声はすでに終わっていたが、人々はまだ歌詞の雰囲気の中に浸っていて、そこからなかなか抜け出せないようだった。

 「皆さん、林健華の顔を見て」孫女史が重く沈んだ空気を振り払うように言った。この時、「風月」の中で端午を演じた林健華が、ステージの下で涙にまみれていることに皆は初めて気がついた。涙は彼の洋服の襟元まで濡らしており、林健華は恥ずかしそうに背中を向けて人ごみの中に消えようとした。

 この時、皆はまた林健華に一曲歌うように叫び、彼は「イ尓怎麼舎得我難過(黄品源の歌 4.5MB MP3)」を歌った。続いては周潔の番だった。この夜、張国栄が歌うまでは元気にあちこちを動き回っていた周潔が、今は椅子に坐ったまま一言も発せずにいた。この時、皆が彼女にステージに上がるように叫ぶと、彼女は両手で顔を覆い隠すようにしていた。さっきまで彼女と一緒に騒いでいた仲間が、彼女がふざけているのだと思って手をどかすようにすると、彼女の指の隙間から一筋の涙がこぼれ落ちるのが見えた。周潔の顔は真っ赤で、涙はまるで泉のように溢れかえっていた。今日の出来事が彼女に何かを思い出させたのだろうか・・・・
 
お開きが近づいた頃、張国栄はそっと席を離れ出口に向かって歩いていった。気付いた人が彼に声をかけ呼びとめようとすると、張国栄は「しーっ」と、手で音をたてないようにと合図した。それはまるで歌の中の


「莫揮手 莫回頭
   再見不会太遥遠
   若有縁就期待明天 イ尓和我重逢在燦爛的季節」

 「手も振らずに 振り返らずに
    また逢える日はそう遠くない
       もし縁があれば明日に期待しよう
       輝ける季節にもう一度めぐり逢おう」


こんなにも芸術を愛し、こんなにも人生を愛した人間が 何故逝ってしまった?完璧であることを追求しすぎたためなのだろうか、あるいは、彼はしばらくの別れを告げただけなのかもしれない・・・・・



趙 榮 



日本語訳:小蘭



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Leslie Cheung Cyber World











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